東京地方裁判所 昭和53年(行ウ)137号 判決 1979年5月16日
東京都練馬区貫井四丁目四七番地三五号
原告
須藤咲雄
右訴訟代理人弁護士
山本政雄
東京都練馬区栄町二三番地
被告
練馬税務署長
亀谷誠三郎
右指定代理人
竹内康尋
同
古俣与喜男
同
中村政雄
同
金田晃
同
牧憲郎
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
(当事者の求めた判決)
第一原告
原告の昭和四八年分所得税について、被告が昭和五二年二月二八日付でなした決定処分のうち税額六一万二、一〇〇円を超える部分を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
第二被告
一 本案前の答弁
主文同旨
二 本案に対する答弁
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
(当事者の主張)
第一請求原因
被告は、昭和五二年二月二八日付で原告の昭和四八年分所得税について税額を一、〇八三万九、六〇〇円とする決定処分(以下「本件処分」という。)をした。原告は、これに対し異議申立て及び審査請求をしたが、いずれも却下された。しかし、本件処分は、原告の所得を誤認した違法があるので、その取消しを求める。
第二被告の本案前の主張
一 本件訴えは、不服申立ての前置を欠く不適法なものである。
1 被告がした本件処分の通知書は、昭和五二年三月一日原告に送達されたものであるところ、原告がこれに対して異議申立てをしたのは、被告及び本件処分に係る調査を担当した税務職員の正しい教示若しくは説明にもかかわらず、国税通則法七七条一項が定める異議申立期間(二月)を徒過した同年五月二五日であった。そのため、被告は、右申立てを不適法なものとして却下した。原告は、右却下決定を不服として同年七月四日国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は、同法九二条の規定によりこれを却下した。
2 したがって、本件訴えは、適法な不服申立前置を欠くものであって、行政事件訴訟法八条一項但し書、国税通則法一一五条一項の規定により不適法な訴えとして却下されるべきである。
二 本件訴えは、法定の出訴期間を徒過した不適法なものである。
国税不服審判所長は、前記裁決を昭和五三年六月二〇日付でなし、その裁決書謄本は同月二二日原告に送達されているが、本件訴えは、右送達日より三箇月を経過した後である同年九月二二日に提起されている。
よって、本件訴えは、行政事件訴訟法一四条一項、四項の規定により出訴期間を徒過した不適法なものとして却下されるべきである。
第三本案前の主張に対する認否と原告の反論
一 本案前の主張一の1及び同二の前段の事実は認める。
二 原告は、裁決書謄本が送達された昭和五三年六月二二日当時、新潟県南魚沼郡の山中にいて、自宅に戻ったのは同月末日であり、そこで初めて裁決書謄本の送達のあったことを知ったのであるから、本件訴えの出訴期間は昭和五三年六月三〇日をもってその起算日とすべきである。
(証拠)
被告は、乙第一ないし第三号証、第四号証の一、二、第五、第六号証を提出し、原告は、その成立(第四号証の一、二については原本の存在も含めて)をいずれも認めた。
理由
一 被告の本案前の主張一1の事実は、当事者間に争いがない。
二 右事実によれば、原告が本件訴えに先立ってなした異議申立ては、被告の正しい教示があったにもかかわらず、国税通則法七七条一項所定の不服申立期間(二月)を徒過していたものであることが明らかであり、不適法な申立てであったといわなければならない。
そうであるとすれば、本件訴えは、行政事件訴訟法八条一項但し書、国税通則法一一五条一項の規定に違背した不適法な訴えというほかはない。
三 よって、本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 佐藤繁 裁判官 川崎和夫 裁判官 菊池洋一)